おくりびと


東京に戻ってきた土曜日は、ゆっくり家で休養。
日曜日は映画の「おくりびと」を観にいった。


この映画、先日滞在していた地元の山形県酒田市がメインにロケ地になっているとのことで大きな関心を持って観賞する。
また、「おくりびと」なる納棺士(師)は、われわれと職場が一緒の職業なので、そういった意味でも親近感をもって観てみた。


130分と平均的な時間、一度も退屈すること無く観終える。
一言でいえば「なんとも映画的」。
人の死を巡る人間模様や、納棺士のもっくん(夫)とそれをあまりよく思わない広末(妻)の夫婦関係の動揺が、この映画でもっともフォーカスしていた所ではなかっただろうか。
後半は鼻をすする音が満遍なく聴こえた。


自分は、自分の住んでいた学区や酒田の名所が随所に出てくるところに、スクリーンに映るとこんなんになるんだ、という一種の感動と、現代の話なのに庄内弁が少しひどい、というちょっとした無念と、納棺士ってこんなに情感的でかつ貶められた職業なのか、という違和感を持った。
最初の2つの感想に関しては、地元民特有のものだが、3つ目の感想に関しては、葬祭関係者がみな思うことではなかろうか。
出演者の余貴美子が、納棺士は「隙間産業だから」と言っていたが、この作品は文字通り「隙間産業」に光を当てたもののように思える。
納棺士が一般にはひどい職業に思われているけど、実際は人の最後の旅立ちを演出する素晴らしい職業だよ、という「光」を当てているように感じた。
葬祭関係の仕事に携わるものにとっては少々リアリティーに欠けるが、別に映画にはたいしてリアルは必要でないのでそれは求めすぎともいえよう。
また、自分の立場や育った環境が特殊で、一般の感覚とずれているというのもあったのかもしれないし。
とりあえずいろいろ考えさせられた。




音楽と風景がマッチしていた点(やっぱり久石譲はいいわ)、もっくんはやっぱり風変りな職業(スポーツ)が似合う点、もっくんと広末の夫婦の演技が意外に良かった点、山崎努があまりにもかっこよすぎる点など、総合的には良い映画ではあった。
だって、やっぱり泣きそうになったし…。
ああいう映画が地元で撮られたというのも、とても嬉しく誇りに感じる。


最後に印象的だった言葉。
(クリスマスに、納棺士の事務所でクリスマス的な音楽をチェロで弾こうと思ったもっくんが「宗派とか問題ないですか?」と聞いたとき、山崎努が)
「うちは、仏教、キリスト教イスラム教、ヒンドゥー教なんでもしている、問題ない」
イスラム教、ヒンドゥー教が入っているのが渋いね。